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凜がスマートフォンの画面を確認する。ホーム画面と時刻が表示されたと思うけど、瞬時に暗くなった。
「だいじょぶ?」
購買を出た後に、凜が首を傾げて聞いてくる。リュックの中でカラカラと小さくガムがぶつかる音がした。私は大きく頷いて、話そうとしたのだが。
「ど、どっから話せばいい?」
自分のことながら、情報量が多すぎる。取っ掛りを探せなかった。凜はこの質問に「んー」と軽めの唸りを上げる。
「紫が話せそうなとこからでいいけど。順番的には、留守電あたりから? そのあとどうなったか聞いてないと思う」
てくてく教室に向かいつつ、口を動かし始める。
もはや話すと言うより吐露と表現した方がしっくりした。
教室の前で浅草さんと女の子たちに会ったこと。
次に白崎さんに会ったこと。
プリントを貰ったこと。
話しているうちにしんどくなって、トイレに駆け込んだこと。
「そしたら、白崎さんから鬼電かかってきて」
「ええっ」
予想外だったのか、凜の目がこちらが驚くほどまん丸になった。
「白崎さんでも鬼電するんだ。人って分からんもんだね」
「ほんとにね」
さて、本題はここからだ。
「それで、その」
うわ。まずい。いきなり喋りにもったり湿気が帯びてきた。気のせいかもしれないが、歩く速度ものろのろしてくる。すうっと密かに息を吸い込んで、続きを話した。
場繋ぎ程度に雑談をしたこと。
それから。
……それから。
「白崎さんの前で思いきり泣いたの申し訳なさすぎるし、面倒くさすぎると思って」
「別に面倒ではないでしょ」
「泣く女は面倒くさいってネットで言ってた」
「なんでそのタイミングでそんなの見たの? やめなマジで」
メンタルが腐ってる時にネットサーフィンするものじゃない。身をもって痛感した。嫌な話題ばかり目につく。
「なんか言いたそうにしてたのに、聞きたくなくて。今更すぎだけどね」
「まあ言いたくなるわね、たぶんすごい誤解してる予感がするから」
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