7 カーテンコール

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 凜の言葉に、私の歩みは完全に止まった。 「誤解? 私がしてるってこと?」 「そう」  凜も止まって、大きく一回うなづく。 「もっかいちゃんと話した方いいよ。白崎さんと」 「うええ……」 「白崎さんも、紫に伝えたいこと絶対たくさんあると思うし。ね?」  そう言われた私は、かろうじて「分かった」と掠れ声しか絞りだせなかった。  この時間の授業は凜と一緒だ。人数の規模がそれほど多くないため、教室は講堂よりかは狭め。教室に入ると、やはり前方はガラガラで後方の座席のみ着々と埋まっている様子だった。  授業中に当てられる訳では無いけど、気持ちはなんとなく分かる。  凜と私は出入口ドアの真横の空席に目をつけた。一番前でもなく、後ろすぎる訳でもない。中腹部だ。するすると座席の合間を縫って着席する。  教科書とルーズリーフとレジュメの入ったファイル、あとは筆記用具。凜はそれにガムボトルを加えて、ようやく口に放り込んでいた。私の話は失礼になるから噛まないって言ってたけど、授業中はいいのか。 「あれ」 「内緒ね」  いや私に内緒でもいいけど、先生にはさすがにバレないか。  若干のヒヤヒヤがあるが、つぐみちゃんの件に比べたら全然可愛い方だ。幸い、私たちの座席の前にはやたら大きいリュックサックやらカバンやらがずらりと横一列に鎮座している。持ち主を知らない上に勝手な偏見だけど、場所をとるだけとって本人たちが来るかは微妙だ。  授業開始まであと五分ちょっと。
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