シークエル

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 やり場のない視線を校舎に丸投げした。廊下の窓が太陽の光に反射してちかちかする。  一階の窓際で壁に寄りかかりながらスマートフォンをいじってる人が目に入った。デニムジャケットをあのウインドブレーカーのように両腕だけを通している。  たぶんつぐみちゃんだ。  一瞬誰かと思ったのは、服装が随分と変わったからだ。紺のデニムジャケットに加えてピンクと白のキャップを浅めに被っている。いわゆるカジュアル寄りにシフトチェンジしたらしい。  すっかり鞍替えしたのか知らないが、ぱったりと関わりがなくなった。こちらを大学構内で見かけても、前ほどのがっつりさが消えて、むしろよそよそしさまである。確かに私もどの顔下げてという感じだけど。もう他人を巻き込なければいいなと思う。  連絡先を交換してないのも、ここに来て尚更ありがたい。ただ、浅草さんではない他の誰かになったのだけは分かる。私の代わりは見つかったかまでは管轄外だ。 「なんか通知来てるよ」 「あ。ほんとだ」  凜が袖口から指先だけ出した。一気に視点が引き戻される。スマートフォンの電源ボタンを押すと、いつものロック画面に『新着メッセージ 三分前』とのポップアップが表示された。 『今日一緒にご飯食べに行きたいんだけど、夕方って都合いいか?』 『これから授業だから返事急がなくて大丈夫』  白崎さんからだ。ご飯何食べようかな。とりあえず最後のお言葉に甘えて、少し返事を待たせてもらおう。私はメッセージを開くだけにして画面を再び閉じた。   「なんだって、白崎さん」  え。 「顔見ればわかる」  そんなに分かりやすいかな。何も言ってないのにぽんぽん言葉が出てくるのを見ると、相当らしい。 「全然気に病むことないと思うけどね」 「そう?」 「ちょっと心配性なとこあるもんなあ」  それは強く否定しづらい。  私が口を淀ませると、凜が「ま、今日会うんだろうし。気になるなら聞いてみなよ」となかなかなご提案をしてきた。聞けるタイミングがあるなら、聞いてみようかな。私の度量次第でもあるようだけど。
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