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『葉山月子様  月ちゃん、元気にしていますか?  私は元気ですよ。  月ちゃんに手紙を書き始めると、どこから話そうかと悩んでしまいます。  結局、あなたと過ごした、高校の日々を思い描いている時間の方が長くなってしまいます。  それほど当たり前のように、月ちゃんは思い出の中に登場してきます。  月ちゃんに、今の様子を伝えたいのです。  それで「月ちゃん、元気にしていますか?」と、呟くのが癖になっています。  あなたが県外の大学に行っても、私たちは大丈夫だと思っていました。  落ち着いたら、連絡し合えると思っていました。  お互い、慣れない環境になじむ方に一生懸命だったのよね。  こんなにすっぱり、絆が途切れるなんて思ってもみなかったのです。  手紙を出そうとするたび、ためらってしまうのです。  きっと、新しい友だちができて、今の生活を楽しんでいるのだろう。  そう思うと、やっと書いた手紙を出せなくなってしまうのです。               平岡唯子』
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