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プロローグ
縁側に膝立ちし、妹、佐和の髪をとく。後れ毛を少し残してから、丁寧に編んでいく。こんな風に佐和の髪を結うのは、久し振りだ。
突然、髪を結って欲しいだなんて。新たに好きな人でも、出来たんだろうか?
もし、そうならば。兄として、嬉しく思う。
ふいに、佐和が聞いた。
「お兄ちゃんってさ。昔から……そうだったの?」
「……何が?」
聞かなくても、本当はわかっている。佐和が、何を聞きたいのかを。答えられないのは、自分の罪悪感からだろうか。俺は、佐和と同じ人を好きになってしまった。
幼馴染みの、男の事を……。
「昔さぁ。好きな女の子、居たよね?」
高校生になった佐和は、数ヵ月前より、大人になったと思う。俺は答えに困り、キツく髪を結んだ。
「いたーい」
佐和は、甘えた声で言うと、頬を膨らませて、振り返る。困った時だけ、子供っぽい。これは、妹の特権だと思う。
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