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気が付けば、どこかのビルの屋上に立っていた。
私は何も考えることなく、フェンスを乗り越え、呆然と夜の都内を見つめていた。
最初はとても綺麗なビル郡を眺めているだけだった。
綺麗な夜景でも見れば、気が晴れると思ったのだ。
ところが、とある高層マンションに目をやってしまった。
嫌な妄想が私の脳裏に焼きついた。
もし、あのマンションに雅司が住んでると思うと………
奥さんと幸せそうな生活を送っていると思うと……………
忘れようとしていた奴の顔が一気に蘇ってきた。
嫌だ………
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ………
嫌だっ!!
もう、アイツの顔なんか思い出したくないっ!!
アイツの勝ち誇った笑い声なんか聞きたくないっ!!
私が必死になって抵抗を続けたが無駄に終わった。
だけど………
それを止める方法が1つだけある。
考えてる余裕などなかった。
躊躇いもなかった。
私は雅司の顔を思い出したくない一心で、何もせずに、ただ身体を傾けた。
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