帰り道に

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 改札を出ると、吹きつける北風に身が縮んだ。ジャケットのファスナーを襟元まで上げて、駅前の交差点に立つ。    どことなく、道行く人々の足が急いて見える夕暮れ時。    ふと目に留まったのは、向かい側にある暖色の照明を灯したコンビニ。  信号が変わると、いつの間にかそこへ足が向いていた。  疲労した体が高カロリー食品を求めてくるから、選んだのはチョコレート。  どこの店でも見かける、普通の板チョコ。  久しぶりに手にとったそれは、変わらぬ装いと軽さで僕に挨拶をした。  ひとけのない、川沿いの一本道が帰宅路。  出迎えた寒風に無愛想を返しながら、買ったチョコをポケットから取り出す。  銀の包みを剥がすのが下手なのは昔と同じ。  思わず苦笑したけれど、子供の頃はそんなこと気にしなかったよね。  ポリポリとかじりながら歩く。  舌に伝わる甘さが懐かしい。  これが一番好きな味だった日は、いつでもたくさん食べられる贅沢を夢見ていたっけ。  つい頬を緩めたら、何だか足取りまで軽くなったみたい。  子供の頃の自分が、知ることのなかったこの瞬間。  少しだけ、大人の自由を感じた。
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