episode5

5/21
164人が本棚に入れています
本棚に追加
/298ページ
「そんなわけないよ!」 深夜だというのに。 抑えきれずに、僕は大きな声を上げた。 「そんなわけないじゃないか……。 高校を卒業して、この家を出た後も……。 高槻君が会ってくれるなら、僕は高槻君に会いたい……」 だから、お願い。 僕に背中を向けないで。 キミが少しでも離れると、不安でたまらないんだ。 しばらくじっとしていた高槻君だったけど、ゆっくりと僕の方を向いて。 優しく抱き寄せてくれた。 「会ってくれるならって、また自分を下げるようなことを言って。 違うよ。 俺が会いたいんだよ。 もういっそのこと、一緒に暮らしたいくらい」 「え……? ほんとに……?」 僕の言葉に、うんと頷く高槻君。 「男同士で、こんなの変かもしれないけど。 でも璃音と離れるなんて、俺は考えられない……」 高槻君がせつなそうに言うから、僕はなんだか泣きそうになった。 「僕も考えられない……。 ずっと、ずっと高槻君と一緒にいたいよ……」 高槻君は男の人なのに。 どうしてこんな気持ちになるのかな? 「じゃあ、卒業したら一緒に住もう。 これから二人でゆっくり計画立てないか? どんな街に住むかとか、どんな仕事をするかとかさ」 「わぁ、それって、なんだかすごく楽しそう!」 「だろ?」 そう言うと僕らは笑顔で、ぎゅっと抱きしめ合った。
/298ページ

最初のコメントを投稿しよう!