親友はロボット

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 今日は午前中に体育の授業がある。スポーツの秋だからという訳でもなく単なる授業の一環にみんなでソフトボールをやるのだ。わたしはヒヤヒヤしている。万が一誰かが投げた球が逸れて咲良ちゃんに当たったら大変なことになるんじゃないか。春にサッカーをみんなでやったとき、ヘディングシュートをした後に咲良ちゃんは暫くフリーズしてた記憶がある。あれはヤバいと思った。ソフトボールともなれば衝撃がかなりあるだろう。 「千秋ちゃん、今日は難しい顔をしてない?」  咲良ちゃんがわたしの前の椅子に座って身を乗り出す。 「えっ、そう?」 「ウン。千秋ちゃんはさ、いつも笑ってるもん」 「それじゃあ、わたしがノータリンみたいじゃない」 「そんなことないよ。何時も明るくて羨ましいと思ってるんだよ」  千秋ちゃんはそう言うと、ニッコリ笑う。綺麗に整った歯が白く眩しい。 「咲良ちゃん、今日の体育は出るの?」 「もち、ソフトボールでしょ。楽しみだなあ」  なんたることだ。この子はデッドボールの怖さを考えていないのか。のん気なんだから。万が一ボールがぶつかり体が壊れちゃって、みんなにロボットだということが解ってしまったら、どうするつもりなんだろう。 「わたしは出たくないなあ」  一緒にサボろうと言えば乗ってくるだろうか。 「えっ、なんで?千秋ちゃんは体育が得意じゃない」 「ソフトボールは嫌いなの」  ああ、上手い言葉が見付からない。こんな単純な理由ではダメだ。 「わたしも苦手だけど、頑張るもん。千秋ちゃんも一緒にやろうよ。大丈夫。嫌わない、嫌わない」  咲良ちゃんがわたしの頭をナデナデしてくる。うーん、そうじゃあなくて。あまりに無邪気な返答に可笑しくなってついつい苦笑する。
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