秋風たなびくアイス日和

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 またまた聞き慣れた声が聞こえた。女の子の声だ。大人ではなさそうだから生徒だろう。でもこちらは誰だったか思い出せない。確かに聞いたことはあるはずだが……。 「冬でも?信じらんねえな。俺は夏でもよっぽど暑くないと食べないぞ」 「先生寒がりだもんね。この前の体育の時間も一人だけ着込んで皆からブーイングくらってたし」 「あれは教師の特権だ」  女の子が笑う声が聞こえる。顔は見えないけれど、声だけでとても楽しそうなのが分かる。特に女の子の方は。 「さ、そろそろ帰れ。見つかったら困るだろ」 「はぁーい。あ、次回のテストもご褒美お願いしますね」 「え、ちょ、まてお前……」  イスから立ち上がった音とともに慌てて物陰に隠れた。なんだか見てはいけないものだった気がしたから。  ドアの開く音がして、生徒の方が出てきた。制服のスカートの端が揺れるのが見えた。ここからでは顔が見えない。  誰だろう、とそうっと顔を覗かせると、担任の先生同様、見慣れた顔があった。 「長崎さん……!」  いつもより声が少し高めだったので気づかなかったが確かに同じクラスの長崎さんだった。教室でのイメージは大人っぽくて賢くて、運動でもなんでもそつなくこなす完璧な人、という感じだ。  でも今は……。  教室では見たことの無い、嬉しそうに笑う長崎さんから目が離せなくなった。  保健室を出て行く長崎さんは隠そうとしてるけれど、隠しきれずに笑みがこぼれてしまうような、そんな表情をしていた。  手にはアイスの袋をしっかり握っている。1口サイズの丸くてたくさん入ってる、かわいいやつ。
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