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新しいぱぱとままにゃ
わたしがぱぱとままに出会ったのは、冷たくかたくなったももちゃんがお花いっぱいの箱で眠っているときだった。
ももちゃんのそばでわんわん泣く大きな人がふたり。
この人たちがももちゃんの、これからわたしのになる、ぱぱとままだった。
どうしてももが
こんなに小さいのに
返して
酷すぎる
ももちゃんとわたしにぶつかった車に乗っていたのは、まだ若い男の人。気の良さそうな人で、ぱぱとままに「本当に申し訳ない」と頭を下げて何度も謝っていた。
だから、二人も本気で怒ることはできなくて、もう過ぎたことだからって諦めちゃった。
でも、本当は全然納得できてなくて、悔しくて。
悲しくて、でもそのどれもを誰かにぶつけることはできなかった。二人とも、とっても優しい人だから。
猫のわたしは人の世界のことなんてわかんないけど。でも、おかしいと思った。変だと思った。
道路でぶつかった車に乗っていたの男の人は、お酒臭かった。
飲酒運転だった。
何時間も何時間もももちゃんだったものの側から二人は離れられずに、ずっと泣いていた。
あんまりにかわいそうだったから、わたしは二人に声をかけた。
「にゃあ(ぱぱ、まま)」
二人はわたしに気づいて、泣きながら笑ってくれた。
「どうしたんだい?小さな猫ちゃん」
「にゃ…にゃ…」
「ん?」
「にゃかにゃいで(泣かないで)」
二人は目をまんまるにしてビックリしてた。
それからわたしは、ももちゃんの箱の側で二人に何があったのかを話した。
(なんで猫が話せるようになったのかを気にする人は、そこにはいなかった)
わたしとももちゃんの出会いと、出会ったきっかけ。
名前のこと。
これから、家族になろうって言ってたこと。
それと…
ぶつかってきた車に乗ってたひと、嫌いってこと。
だって、わたしからももちゃんをうばった。
ももちゃんと過ごすはずだった時間をぜんぶうばった!
猫の一生は人よりすっごく短いよ。だから、だいじにだいじに遊んで食べて寝るの。
なのに!なのになのに!!
わたしからももおねぇちゃんをうばったの!
わたしにくれるはずだったももちゃんの笑顔を全部!全部全部、うばって!
「申し訳ない」の一言で終わらせた!!!
わたし、あの人嫌い!だいっっっきらい!!
わたしは白い体と長い尻尾、高い声を全力でくしして伝えた。
始め泣いていたぱぱとままは、いつのまにか笑ってた。
「ももはもういないけど、家族になろう」
「もものかわいい妹ちゃん、これからよろしくね」
ももちゃんはその後、真っ赤な炎の中に消えていった。
外に出て、お空に高く高くのぼっていく煙を見た。
わたしがぱぱとままに出会った日だった。
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