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猫とみんなと先生にゃ
がっこうへいった。
ももちゃんが楽しみにしていたがっこう。
二学期の一日目をむかえられなかったももちゃん。
わたしは高い木によじよじして、ももちゃんのくらすを見た。
みんな、暗いかおをしてた。
一個だけ、台の上にお花がかざってあった。
いなくなった人の机にはお花をかざるんだって。
たくさんのお花の中に、本物じゃないお花が混じってた。
今はもう咲いてない、「桃の花」。
ももちゃんの机だった。
おへやの中では大人の人が一人黒い板の前で腕を上げてた。他の子たちはいすに座って静かにしてた。
わたしはそぉっとおへやに忍びこんだ。
まだ誰もきづいていにゃい…
いすに座った。
大人の人が気づいた。
その人はくちもとを少しだけゆるませて、なにも見てないふりをした。
その時間、わたしずっとももちゃんのいすに座ってた。
キンコンカンコン、音がなった。
みんな、立ち上がった。
わたしも、立ち上がった。
「猫がいる!!」
気づかれた。
というか、やっと気づいたにゃ
男の子が言った。「そこはももの机だぞ!」
女の子が言った。「ももちゃんの席からどいて!」
みんな泣いてた。
ぱぱとままとおんなじ涙だった。
みんな、ももちゃんがいなくて泣いてる。
大人の人が言った。
「この子はももの妹さんだよ。先日ご両親が話してくれた。最期の時も一緒だったそうだ」
みんなが叫んだ。
「「でも猫だよ!」」
わたしも叫んだ。
「シャーーー!」
なんか変だったけど、みんなの気持ちはなんとなく伝わってきた。きがする。
みんなさみしいんだ。
お友だちが急にいなくなってさみしいんだ。
そうかそうか。
にゃらば、わたしが一毛玉吐いてやろう。
(人の場合は一肌脱ぐとも言う)
わたしは黒い板の前の机に飛び乗った。
「わたし、ももちゃんのいもぉと!
にゃまえはしゃきゅりゃ…にゃにゃにゃ!
にゃまえはさくら!」
まだうまく回らない舌で宣言する。
「ももちゃん、がっこぉ楽しみにしてた。すっごく。
だから、わたしがかわりにくる」
ももちゃんはがっこうへ行ってみんなと会えるのをすっごく楽しみにしてた。
みんなと大きくなるのを楽しみにしてた。
でも、ももちゃんはもういない。
だから、わたしがももちゃんの代わりにがっこうへ行く!
ももちゃんの分までおべんきょする!
それで、立派な猫ににゃる!
学校と猫は関係なかった。
大人の人がみんなに言った。その顔は満足そうでいて、楽しくてたまらないっていうかおをしてた。
「みんな、この子は今日からこのクラスの一員になる友だちだ。猫だけどね。
ももはもう二度と一緒に授業を受けることはできない。
…ももは死んだんだ。
でもね。あの子が遺していったものがある。
あの事故で消えるはずだった小さな命だよ。
ももは立派にこの子を守ったんだ。
友だちとして誇るべきことだ」
みんな静かに聞いていた。
わたしはちょっとあくびをしていた。
「僕はこの猫をクラスメイトとして新たに迎えようと思う。ももの代わりじゃなくて、新入生だ。」
しんにゅうせい
後日、侵入生として語りつがれる猫小学生のたんじょうだった。
みんなやっとももちゃんのことを受け入れられそうだった。
一人の女の子が言った。
「さくらちゃん、これからよろしくね!」
ももちゃんの笑顔を思い出すような笑顔だった。
その子は、ももちゃんの親友だった。
次の日、ももちゃんのお花がかざられた机はかたづけられ、ダンボールとぼうさいずきんがおへやのすみに置かれていた。
「おはようございまーす!」
元気なあいさつがおへやにひびく。
「にゃにゃにゃー!」
子どもたちの声に混じって元気な猫の声がおへやにひびく。
わたしとみんなが出会った日。
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