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(そうだよ、とりあえず断ろう)
色々考えた結果、私はその結論を頭の中ではじき出していた。
「森上さん」
「っ!」
考え事が終わったタイミングで声を掛けられてドキッとした。少し焦り気味に声の方へ視線を這わせると其処にはまりえちゃんが立っていた。
彼女は新人教育で担当した後輩であり、今は私の部下として同じ部署で働く有能な若手編集者だったけれど──
(彼女が宮間さんと……)
昨日の出来事を反芻すると何となく目を合わせることが躊躇われた。順番からいえば私の方が浮気相手、という立場になるらしい。
(はぁ……やり辛い)
知らなかったとはいえ彼女の彼と付き合っていた気になっていた私はどの面下げて対応すればいいのか迷いまくっていた。
「…あの、森上さん、どうかしましたか?」
「え……あ、いえっ、何でもないです」
「そうですか?じゃあ早速ですが、以前企画書を提出していた件が編集長からゴーサインが出まして」
「あ、そうなの?よかったわね」
「はい。それで森上さんにも是非協力していただけないかと思いまして」
「…え」
内心(このタイミングで?!)とひとり突っ込みをしてしまった。
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