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(仕方がない…これだけはいいたくなかったけれど)
私は浅くため息をついて気怠そうに口を開いた。
「あの…私のことをまりえちゃんは知っているんですか」
「──っ」
私が放った言葉に宮間さんは一瞬焦った顔をした。それを見て私は内心(やっぱりな)と呆れた。なのでその辺を重点的に責めることにした。
「今度私、まりえちゃんと一緒にある企画に取り掛かることになったんです。つまりまりえちゃんと顔を合わせる機会が増えるということです。そんなまりえちゃんに宮間さんとのことを黙っているのは心苦しいので一度ちゃんと謝罪したいなと思っているんですけど」
「っ、馬鹿かおまえは!いうなよ、絶対!」
「でも宮間さんはそういうのを分かっていて私と寝たんですよね?まりえちゃんと私、どっちにしようかと悩んでいたんですよね」
「…そ、それは……言葉の綾ってやつで──」
「じゃあやっぱり本命は最初からまりえちゃんで私とは浮気だったということになるんですね。だったら宮間さんが私に固執する理由が解りません」
「……」
「もういいじゃないですか。止めましょうよ。浮気とはいえ結婚前でよかったです。私も少しは罪悪感が薄れますから」
「……おまえ…そんな性格だったか」
「……」
宮間さんがいいたいことはよく分かる。少し前までの私はオドオドしているばかりで自分を過小評価して落ち込んだりする大人しい印象が強かったのだろう。
(これってやっぱりキリオくんのせい…なのかな)
あの夜、キリオくんを助けた日からキリオくんという存在が少なからず私に影響を与えて来た効果のような気がした。
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