閉じ込めた男

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「あぁ~~疲れたぁ」 終業時間を迎え、私は疲れた体を引きずるように退勤した。会社を出る時丁度午後から外回りに出ていたまりえちゃんと会った。 「あ、森上さん、今お帰りですか?」 「えぇ。井口さんも今日はこれで終わり?」 「はい。少し報告がありますけど残業無しで行けそうです」 「そう。定時に帰れる時には帰らないとね」 「そうですよね。これから企画作業に入ったら定時帰宅はしばらくお預けになりそうです」 「そうかもね」 そんな軽い会話を交わして私はそのまま手を振って去ろうとした。──が 「あ、そういえば森上さん」 「はい?」 「結婚するって本当ですか?」 「………え」 突然振られた話にギョッとした。 「あ、いえ…違っていたら申し訳ないんですけど…その、ちょっと小耳に挟んで」 「小耳にって…誰から訊いたの」 「あ、いえ…それは……違っていたらいいんです。では、お疲れ様です」 「あ…ちょっと──」 まりえちゃんはバツが悪そうな表情を浮かべながらそそくさと建物の中に入って行った。 (……ちょっとぉぉぉ) まりえちゃんの様子から予測出来る話の出処はきっと宮間さんだ。宮間さんがまりえちゃんにメールか何かで私が結婚することを仄めかしたとしか思えない。 (そう、まだ疑っているってわけね) 意外と口が軽いだろうまりえちゃんがついポロッと色んな人にいいそうだということを見越しての吹聴ならたいしたものだ。
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