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だから俺は鈴子の出した条件を受けるための条件を出した。
『俺と毎日セックスして欲しい』
この必要最低限の条件を飲まないのであれば話はもっと簡単だったかも知れない。結婚しないままもうあと何日か世話になって飽きた頃に部屋を出て行けば済む話だった。
だけど鈴子は条件を飲んだ。
その模範的な答えに何処かホッとしていた俺がいたことは俺自身、気がつかない振りをした。
表層的にはお互い条件を出し合い、それを認めた上での対等な関係の結婚なら悪くないと思った。
(別に一度や二度結婚したところで痛くも痒くもない)
気に入らなければすぐに関係を解消すればいい。
──いや、解消するようにもっていけばいいだけのこと
ある種打算的な思惑がある一方で何らかの未来を望んでいたのかも知れない。
そう、この俺を閉じ込めた女に俺は何かしらの救いを望んでいるような気がしてならなかったのだった──。
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