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それを刃物で突き刺した瞬間女はそれからは想像出来ない感触を感じた。思ったより硬くザラザラした感じた。豚や牛もこんな感じなんだろうか。彼女が刃物を突き立ててから一拍おいてそれから血が吹き出てきた。
女は力を込めてもう一度それを刺す。苦痛に歪んだ顔が女を見た。女は男の目を塞ぎ、さらに何度もナイフを突き刺した。血は迸り、女は血を浴びながらさらにナイフを突き立てる。そしてとうとう人間であったものはただの肉塊へと姿を変わってしまった。
シャワールームに入ってからわずか15分ですべてが終わった。彼女はたった15分で憎悪のために学歴もキャリアも人生もすべてぶち壊したのだった。
すべてが終わった瞬間、男への憐れみの感情が込み上げてきたが、すぐにこれで男から解放されるという安心感にとって変わった。
すでに肉塊になった男を床に残したまま彼女はシャワーを浴びる。男を記憶から消すように彼女は念入りに体を洗った。
時間はない。早くここから逃げなければ。彼女はシャワーを浴びると髪も乾かさずにそのまま、脱衣所のシャツとジーンズを着て部屋を飛び出した。
彼女はアパートから出てしばらく歩くとポケットからスマホを取り出して時間を確認した。
現在時刻13:45。
犯行時間13:30。
コンビニでミネラルウォーターを買おうとして彼女は財布を部屋に忘れた事に気づいた。しかしもう部屋には戻れない。もう通報されているかもしれない。窓ガラスはシャワーで念入りに血を流したはずだが。
お金がない。お金がなければどこにも行けない。このままではすぐに逮捕されてしまう。彼女は考えた挙句SNSで男を頼ることにした。チャットでやり取りしていた男のうちの誰かを。
彼女はスマホを開き、SNSのアプリを立ち上げて男たちに片っ端からメッセージを入れる。今はお金が必要だ。逃げるための資金が必要だ。しかし何から逃げる?警察から?死んだ男から?
程なくして男の一人から返信が来る。今どこ?駅前のコンビニ。あの、サギとかじゃないよね?私と寝たいの?寝たくないの?今すぐ行く!
脈拍が少し早くなる。緊張してるだろうか。あんな事しでかしといてこんな事で緊張するとは。
14:25。若い黒服の男がやってきた。SNSと同じだ。ニヤついた男。きっと水商売なんかやってるに違いない。彼女は男に挨拶し話しかける。仕事は大丈夫なの?平日の真昼間から。男は答える。
「まぁ、仕事は夜からだから時間は全然大丈夫だよ!」
予想通りだ。
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