⁑ 雪の日の出会い ⁑

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 「美味しい!」 「だろう?パンに入れるココアパウダーなんだ、だから。 こうやって飲む」と蜂蜜(はちみつ)を入れ、店主も飲んだ。 (びん)からスプーンで入れるとき蜂蜜が、金色に光った。 ココアが、体の芯から温めてくれる。  飲み干すと「丁度焼きあがったかな?」と店主が席を立った。 工房から、強くパンの香りがする。 私も飲み干し、店主に付いていくと焼き上がりを(かま)から出す所だ。 「どうだ?」と店主。 店員が「イマイチですね」という。 「試作品なんだ」という店主の声に、もっと近づこうとして 店員に怒鳴られた。 「馬鹿野郎!来るな」と(すご)い声。 背後から店主が「焼き上がりは高温でね、火傷するから」という。 それにしても、あの言いようは無いわ。 私は店員を(にら)んだ。 「悪く思わんでくれよ、真面目でパンの事になると夢中なんだ」 そうなんだ。 わたしは仕事中の店員の背中を見つめた。              ##  「これがうちの目玉商品、パン太って言うんだ」 見せてくれたのはパンダのパン。 ココアパウダーで黒い部分を作ってるという。 「でね、嫁さんと子供もいると思って」 「わぁ💛」 お嫁さんはリボンで、子供は涎掛(よだれか)けがついている。 「可愛いー」 「娘の案でね。小学1年の時、動物のパンは無いのって言われて。 パン太は粒あん、嫁のパン子はカスタードクリーム、子供は 赤パンちゃんと言って、チョコクリームなんだ」 「それで、試作品は」 ドンと店員は適温になったさっきのパンをテーブルに置いた。 「小鳥のパンね、どこがダメなの?」 形は可愛いよと私。 「どこが!」とまた怒鳴った。 食紅は使いたくないから、餅粟(もちあわ)で黄色にしようとしたんだ。 餅粟でもちもちとなるはずが、たいして(ふく)らまないし。色も悪い」 「あ、しゃべった!」 「しゃべって悪いか!」 「こらこら、大声はやめなさい」 「店長!何ですかコイツは」 コイツ~??
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