⁑ 小鳥のパン。その2 ⁑

1/5
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/18ページ

⁑ 小鳥のパン。その2 ⁑

 「うわーどうしたらいいんだ??菫ちゃんと約束したのに」 真夜中でも工房に居るみたい、徹夜もある。 何日も寝ずにやってるから、昼間は眠そうにしてる。 子供との約束に、そんなにならなくてもと思った。 でも浩太・・くんは、大真面目だ。 ()りないというか、我慢強いというか。一途(いちず)というか。 毎日何時間でもやっている、疲れないのかな?               ##            私はパン屋に下宿して働くことになった。 主に店のレジと菫ちゃんの相手。奥さんと炊事洗濯。 じつは浩太くんも、2階に下宿してる。 だから奥さんはなにかと浩太くんに捕まるから、助かると言われる。 でも、私は誰かさんの聖地にはなるべく入らない。 書き入れ時はどんどんパンを店頭に運ぶために入るが、窯には近寄らない。 アイツ、怪獣になるもん。 菫ちゃんが言った。 「浩太は時々、ガオガオ怪獣になるんだよ」 菫ちゃんも浩太くんに窯から、追いやられたのね。 菫ちゃんは浩太君になついてる、仲良しだ。 それでも追い払う。 アイツ。優しいのか、意地悪か。どっちなの?           ##  今夜は窯の側にいない、厨房の調理台で(うな)っている。 「寝ないの?」 「お前か、お前こそ寝ろよ」と浩太。 「唸り声で、目が覚めた」 「・・ゴメン」 あれ、今夜はやけに素直。 「大変そうね」 「まあな、マジ困ってる。菫の誕生日までに仕上げたいんだよ」 そういって黒髪をかきむしってる。 「やめなさい厨房(ちゅうぼう)で、衛生上良くないでしょ!」
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!