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⁑ 小鳥のパン。その2 ⁑
「うわーどうしたらいいんだ??菫ちゃんと約束したのに」
真夜中でも工房に居るみたい、徹夜もある。
何日も寝ずにやってるから、昼間は眠そうにしてる。
子供との約束に、そんなにならなくてもと思った。
でも浩太・・くんは、大真面目だ。
懲りないというか、我慢強いというか。一途というか。
毎日何時間でもやっている、疲れないのかな?
##
私はパン屋に下宿して働くことになった。
主に店のレジと菫ちゃんの相手。奥さんと炊事洗濯。
じつは浩太くんも、2階に下宿してる。
だから奥さんはなにかと浩太くんに捕まるから、助かると言われる。
でも、私は誰かさんの聖地にはなるべく入らない。
書き入れ時はどんどんパンを店頭に運ぶために入るが、窯には近寄らない。
アイツ、怪獣になるもん。
菫ちゃんが言った。
「浩太は時々、ガオガオ怪獣になるんだよ」
菫ちゃんも浩太くんに窯から、追いやられたのね。
菫ちゃんは浩太君になついてる、仲良しだ。
それでも追い払う。
アイツ。優しいのか、意地悪か。どっちなの?
##
今夜は窯の側にいない、厨房の調理台で唸っている。
「寝ないの?」
「お前か、お前こそ寝ろよ」と浩太。
「唸り声で、目が覚めた」
「・・ゴメン」
あれ、今夜はやけに素直。
「大変そうね」
「まあな、マジ困ってる。菫の誕生日までに仕上げたいんだよ」
そういって黒髪をかきむしってる。
「やめなさい厨房で、衛生上良くないでしょ!」
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