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「用件なら俺が最初に言っただろうがよ」
可愛い見た目で、ヤンキーさながらのドスのきいた声を浴びせてくるのは、自分達の中のNo.2であるストロベリー先輩である。
「黒蜜キナコ。お前最近ちょっと調子こきすぎじゃね?先輩への敬意忘れてんじゃね?と思ってな」
「え、え?ど、どういうこ……」
「期間限定から脱出できたのがそんなに偉いのかこのクソガキがぁ!……ってわけなんだが全部言わなきゃわかんねーのか、あぁ?」
ああそういうことなの、と僕は泣きそうになる。
そして心の中でツッコんだ。それ結局全部言ったようなもんでしょ、と。
――確かに僕は、最初夏だけの期間限定発売のアイスだったけど!でも営業めっちゃがんばって昇格しただけじゃん、何でそれで責められないといけないんだよおお!
責められるというよりこれは、完全に嫉妬であるような気がするのですが気のせいでしょーか。
なんてことは、口が裂けても言えないわけだが。
「あのな、俺らが今どうやってこうして“通常販売”の席に座ってるかわかってるのか?」
半分泣きそうな顔になりながら、ぐすぐす鼻を鳴らしているのは中堅どころの先輩であるソーダ味先輩だ。
「人気のない味はすぐに打ち切りの憂き目に遭う……そうならないために、少しでも寿命をのばすために、あーんな真似やこーんな真似までして売上を伸ばしてきた俺達の苦労……!お前にわかるか?わからないよな?期間限定発売でいきなりウン百万個売上とか達成したお前にはきっと俺らの苦労なんかわからないよな?」
「え、あーんな真似やこーんな真似って……」
「決まってる!販売担当者のところに行って“お願いします、可愛がってください!何でもしますから!何でもしますから!”って縋りついて、いっぱいいっぱい食べて貰うような悲しい行為のことだよおおお!」
あの、その言い方やめませんか先輩。僕は冷や汗だらだらで思う。
その場面がうっかり、残念でエッチなBLで脳内再現されてしまって非常にきっついのだが。なんといってもソーダ味先輩はムキムキの大男である。でもって、僕らの一番の得意先の販売担当者さんは、お腹がでっぷりした素晴らしき中年男性である。
中年でっぷり男×泣き虫ムキムキ男って一体誰得のカップリングなんだろうか。
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