対称世界のあなたも綺麗

3/71
前へ
/71ページ
次へ
「っあー」 薄ら青いタイルに囲われた浴室内には、全身が写る鏡がある。彼の身長ぴったりくらいの高さと、2人で並んでも余るくらいの幅だった。そばにタイルに浮かせるみたいに置かれた猫足のバスタブがある。泡風呂が似合いそうなガチの猫足のバスタブ。しまいに雨みたいに降ってくるシャワーとかメルヘンチックこの上なくておっさん2人の生活では浮いてるけど、気分転換に外国気分を味わうのにはちょうどいい。でも今はシャワーだけ。 頭から爪先までたっぷりと体を濡らすと、じわじわと芯から温まってくる。 「ふぅ」 本当に気持ちいい。全身でぬるい優しいシャワーを浴び続ける。 迂闊にも微笑んでしまったところで、不届き者は突然バスルームのドアを開けやがったのだった。 「Oh! ハニーなんてセクシーなんだ!」 「お前いきなり開けんじゃねぇよ!」 瞬間的に体を腕で庇ってしまった。 「何を隠す必要があるんだ、俺は夫だぞ?」 無駄に怪訝そうに眉を潜めているのがすげぇ癪に触る。 「だからぁ! いきなり人の風呂開けるやつがあるかっつうの!」 「俺とお前の中だろう、気にするな」 2人っきりとはいえ全開のまま会話を続ける。
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

379人が本棚に入れています
本棚に追加