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彼の逆三角形の体格の方が、よっぽど芸術品みたいなものだと思う。俺なんかはどれだけ鍛えても元がこんなもんなんだか、彼みたいな隆々な見事な筋肉には仕上がらない。
「お前もいい体してんじゃん」
ちょっと笑いながら言う。 彼は自分の体を爪先の方から眺めながら、初めて手に入れたみたいにペタペタと触れている。
「いいや、俺はお前くらいのほっそりした体つきに憧れるよ。自分の体が嫌いわなけではないが、正直もう少ししなやかな体が欲しかったかな。まぁ、生まれ持ったものだから、それ相応の使い方をしてこんな格好なんだが」
無い物ねだりというのだろうか、お互い欲しいものは違うようだ。
「んー、お互いがお互いの欲しい体持ってるって感じかもな」
「その通りだな。だから惹かれあったのかもしれない」
「かな」
なんか今更な話題かもしれないけど、身のない話を改めて確認したところでそろそろ出ることにする。
「のぼせそうだから出るからな」
告げて軽く背伸びして彼の頬にキスする。
「俺もすぐ出るから待っていてくれ」
彼は少し慌てた。親とはぐれるのを戸惑う子供みたいだった。
「逃げねーから大丈夫、ゆっくり入れ」
必死すぎて可愛い。ふっと笑いながら今度こそ脱衣場へ出る。
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