対称世界のあなたも綺麗

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マンションの洗面所は六畳くらいの広さがあって、フェイクなんだか本物なんだかわからないクリーム色の床とそれより淡いいろんな色に光る石が埋め込まれた壁でできていた。壁はなんか緑柱石とかいう変わった石を使ってるらしくて、彼がいたく気に入っていたのだった。俺ももちろん好きなんだけど。 ただ、洗面台の仕切りみたいな板や脱衣場とバスマットを敷いているあたりを隔てている板みたいなやつがすっかりアクリルで丸見えなのがちょっと解せなかった。恥ずかしいから。ちなみに違う階の自宅の風呂場も改装して全然違う仕様になっていて、どっちの風呂場も好きなように使っていた。 休日午後3時、夫は御用達のスーパーに出かけている。それこそ彼の母国発祥の巨大スーパーに。向こうにいる時から通ってたそうで、日本にもあるのを知ると目を輝かせていたんだった。残念な事に、会員証みたいなやつは改めて作らないといけなかったらしいけど。 そんなわけで俺は一人の時間を満喫していた。 「あーあっと」 軽く伸びをしながら脱衣場に到着。家の中の簡易ジムで軽く汗を流した。シャワーを浴びたら一杯飲むつもりで、すでにビアサーバーの電源を入れてきた。生ビールを手軽に飲めるようになったのはこの生活の大きなひとつの利点だけど、贅沢すぎると慢心になるから最初の一杯だけであとは缶ビールに切り替えていた。
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