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1.夢を食べる
ぐぅー……。
腹が減っては戦はできぬとは、昔の人間は良く言ったもんだ。
白濁の獏はそう思った。
今日も、鉄塔の上から見下ろす下界は、あまりにもみすぼらしく、
食欲さえ失われる。
いつから、こんな世界になったのか……と。
昔は、よかった。
人の世の時代で言うなら、昭?…わ…って言ってたかな……。
意気揚々とした眼で、人間どもは生きていた。
あれをしたい、これをしたいという欲がにじみ出て、
あたりかまわず、そのような「夢」の匂いを、まき散らかしていた時代があった。
おかげさまで、その頃は、喰いっパグれもなく、のうのうと俺は生きてこれた。
それが、どうした。
今や、時代が変われば、生き方も変わる。
考え方も変われば、夢の形も変わるのか……。
人間という生き物は、なんとまぁ、不憫なもんだ。
そう思い白濁の獏は、大きなため息をついた。
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