1.夢を食べる

2/3
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
 この白濁の獏。 いつ、どこで生まれたのかは誰も知らない。 ましては、動物でもなければ、妖怪でもない。 ただ、分かっている事は、食べないと生きていられないという事。 その、食べ物は『夢』だ。 そう、将来の希望、願望を願う 『人間の夢』    人の夢を食べるなど、 そんな酷いことをするなんてと思う人間もいるだろう。 ただ、この白濁の獏の持論はこうだ。 「夢を食べることが悪いだと! それよりも、一生叶わない夢を 持ち続けさせることの方が、 そいつにとっては不憫ではないのか? それだったら、 早めに俺がその夢を食らってやり、 きれいさっぱり諦めさせることの方がよっぽど、人助けってやつよ。 人の世の言葉で言えば、 社会貢献ってやつかな。」 そう自分に言い聞かせていたのか、 はたまた、本当にそう思っているのかは、 当の本人にしか、分からないのだが……。    そんな、不思議な生き物は、 今日も、天高く澄み切った青空の袂、 下界を見下ろし、よい獲物がいないか、 いや、獲物ではなく、 「夢」がいないか、じっと目をこらし、また、ひくひく鼻をかぎ分けていた。  そんなことがあっているとは、 露知らない下界では、今日も、 何も知らないたくさんの人間が右往左往して、生きていた。 その光景は、白濁の獏からすれば、蟻の巣穴のように見えていたに違いない。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!