プロローグ

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「はじめ、野球は好きか?」 それはたわいもない問いかけかもしれない。でも幼き頃の少年にとって、その問いかけは大きくなってもずっと耳に残っている優しい声。そして少年の大事な思い出。 「うん、だいすきだよ」 少年は笑顔でそう答えると、問いかけをした者から少年の頭を優しく撫でた。大きなゴツゴツとした手、長い五本の指。でも少年はその手で撫でられることが何よりも大好きだった。何にも変えがたいほど、温かい手。そして彼は少年の嬉しそうな笑顔に、思わずそっと微笑んだ。 「その気持ち、ずっと忘れないようにな。はじめ」
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