1.晴くんと同居、薫くん乱入

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1.晴くんと同居、薫くん乱入

沙弓(さゆみ)。一緒に住まないか」 晴くんが言った。 ここは晴くんの自宅の客室。部屋の数は二十以上、五つある客室のうちの、たったひとつだ。 彼は有名和菓子メーカー『株式会社いずみ本舗』の御曹司・泉晴彦(いずみはるひこ)。 すらりと高い背に、優等生タイプのまとまった黒髪。すっきりと整った顔立ちの、私の自慢の幼なじみだ。 とは言え、私の家も同じようなもの。 ギフト菓子メーカー『株式会社メルヘン・フルール』の一人娘・古屋沙弓(ふるやさゆみ)。 晴くんと同じ二十五歳。自他共に認める、筋金入りの箱入り娘だ。 電車の乗り方、家事のやり方、お金の使い方。どれもあまり自信がない。 このままではダメだと思っているけど、今まで手をつけるきっかけというものがなかった。 兄が会社を継ぐことが決まっているため、何にも縛られず自由気ままな立場だし、今は社会勉強という名目で、本社の総務部で大事に大事に教育されている状態。 だから晴くんの申し出は、箱入り娘にはビックリ仰天、まるで実感の湧かない提案だった。
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