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夜になり、今日は宅配の夕食を利用した。電話一本で、お隣の料亭さんが仕出しのお料理を届けてくれる。
それを晴くんと食べて、ちょうどいい時間にお皿も回収しに来てくれた。世の中、便利なものばかりだ。
「沙弓。お茶を淹れるから、座って」
「うん。ありがとう」
晴くんはお茶を淹れるのがとても上手で、濃さも温度も、お茶請けに用意してくれる和菓子も絶品だ。さすが、和菓子屋さんの御曹司。
昔はよく三人で、和菓子を食べてたっけ。
テレビを見ながらのお茶の時間。いつもは実家で過ごしていた時間が、今日は晴くんとふたりきりだ。
なんだか、秘密基地みたいで、ワクワクしてくる。
「……沙弓。そろそろ寝ようか」
「うん。そうだね」
立ち上がった晴くんに続き、私も後ろをついていく。
各々の部屋に別れるのだと思い自分の部屋に向かおうとすると、晴くんに手首を掴んで引き留められ、「そっちじゃない」と囁かれる。
「晴くん?」
「こっちだ」
「……そっちは晴くんの部屋でしょ?」
さっき見たとき、私の部屋にはシングルベッドがあったはず。てっきり、そこで寝るのかと思ってたのに。
彼は私の疑問には答えてくれず、手首を掴んでその部屋の中へと少し強引に引っ張り込んだ。
彼が電気をつけると、晴くんの部屋には大人ふたりが大の字で寝られる大きなベッドがあった。
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