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一目で分かった。サラサラの茶髪に、優しい目元、王子様のような物腰。私服も明るくて爽やかで。とても大人っぽくなっているけど、雰囲気は変わっていない。
あの“天使”の薫くん……!
「薫くん!?」
玄関にいた晴くんより先に、私は壁から駆け寄って彼の名前を呼んでいた。
薫くんは眩しい笑顔を向けてくれて、出迎えた私の伸ばした手をとり、ふわりと握る。
「沙弓ちゃん。久しぶり。すごく綺麗になったね」
「えっ……」
成長しても高くて透き通ったままの薫くんの声に“綺麗”だと言われ、トクンと胸が鳴った。
そんな私の動揺に気づいているのか、笑顔のままさらに「可愛い」と呟き、彼は続いて晴くんに目を戻す。
晴くんはまだ驚いた顔で呆然と薫くんを見ていた。
「……薫。どうして……」
「晴、久しぶりだね。僕も一昨日、このマンションに越してきたばかりなんだ。隣の部屋だよ。ロイヤルズホテルの本社に戻って都市部の開発を勉強することになったんだ。隣の部屋の表札が泉と古屋になってたから、もしかして、と思ったんだけど……驚いたな。本当に、晴と沙弓ちゃんだった」
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