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「……いや、何でもない。会えて嬉しいよ、薫」
「うん、僕もだよ。晴」
ふたりはやっと体を近づけ、固く握手をした。
十年ぶりに繋がったふたりの手を間近で見て、私は嬉しくて涙が出そうだった。
握手を終えると、薫くんは玄関からこの部屋を見渡すように目を動かした。
そして最後に、晴くんを見る。
「それで、どうして晴と沙弓ちゃんが一緒に住んでるの? ふたりは付き合ってないよね?」
それはね、と説明しようと思ったが、どうして十年も会わなかったのに、私たちが付き合っていないと知っているんだろう、と不思議に思った。
もしかして、私と晴くんは全然そういう関係に見えないのかな。
晴くんの表情が、また硬くなった。
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