117人が本棚に入れています
本棚に追加
/68ページ
話せば長くなる。そう思った私は、薫くんの手を引いて玄関の内側へと招いた。
「中で話すよ! さっきまでお茶してたところなの。ね、薫くんも中に入って話そう」
さっきまでお茶をしていた、と言ったが、よく考えたら違った。さっきまでは、晴くんのベッドで……。
それを思い出すと、私はもう少し薫くんにここにいてもらいたかった。
「うん。じゃあお邪魔しようかな。いいよね?晴」
「あ、ああ……」
「ありがとう」
晴くんに許可をとると、薫くんは靴を脱いで一段上がり、私の隣に立った。
格好いいなあ、薫くん……。背も高くなってる。晴くんより高いんじゃないかな。
顔一個分の身長差がある彼を、下からこっそり見つめた。まつげも長くて儚げで、格好いいけどやっぱり天使みたい……。
薫くんにソファに座ってもらい、私ははしゃぎながらその隣に、晴くんはもう一度お茶を淹れにキッチンへ行った。
「薫くんはこの十年、難しいお勉強をしてきたんでしょう? もう会社を継ぐの?」
「いずれ、ね。まだまだ勉強することはたくさんあるから、しばらくはこのままだよ」
薫くんは、一度キッチンを振り返った。
最初のコメントを投稿しよう!