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「晴くんと一緒に……?」
「ああ。父さんたちが俺たちに結婚してほしいと思ってる、っていうのは分かるだろ?」
「う、うん……」
晴くんはすらすらと話を進める。
私と晴くんが結婚、というのは、数年前からお父さんたちが騒ぎ立てている話。
私たちはお付き合いもしていないのに、いつからかそんな話が沸いて出てきた。
私がこんな状態だから、しっかり者の晴くんと一緒になってくれれば安心する、とのことらしい。
家柄も学歴も、人となりも完璧。
たしかに世間知らずの私がよく知らない男性を選ぶより、一番近くにいる晴くんというのは間違いのない選択かもしれない。
晴くんも、なぜかその話を拒否はしない。お父さんたちに言われるまま、私のそばにいてくれるのだ。
好きだと言われたことは一度もないけど、私もずっと一緒に育ってきた晴くんなら、安心かな、と思っている。周囲に流されるまま結婚話を受けているけど、強く拒否する理由は特になかったのだ。
「沙弓は色々、勉強した方がいいと思うんだ。いつまでも箱入り娘でいるわけにいかないだろ」
「……お、おっしゃる通り」
「だから、家を出て、少し世間を学ぼう。俺と一緒なら是非っておじさんも許してくれたから」
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