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「ふたりで住んでる理由を聞いてたんだ。沙弓ちゃんの社会勉強のためにここまでしてあげるなんて、さすが、晴は教育熱心だね」
薫くんは晴くんの要れたお茶を美味しそうに飲みながらそう言った。
「薫……それは」
「でも、僕は沙弓ちゃんはこのままでも十分だと思うな。素直で純粋で……それに、とっても可愛いし」
薫くんの綺麗な指が、私の頬を撫でた。“可愛い”と言われた嬉しさが表情にまで出てしまう。
すると、私の目の前を晴くんの手が通りすぎ、頬に触れていた薫くんの手首を掴むと、本人へと押し戻した。
「薫。目的はどうであれ、一応、沙弓は俺の婚約者という名目でここにいる。……少しは控えてくれないか」
「晴くん……?」
晴くんは私を通り越して、薫くんを睨み付ける。
少し距離感のあるふたりの様子に、私は悲しくなった。晴くんは、どうして薫くんを遠ざけるの?
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