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「いいなぁ、ずるいなぁ……」
私が思わずそう呟くと、薫くんは晴くんを通り越して私の頭をポンポンと撫でる。
「残念だね、沙弓ちゃん。女の子は男の子と一緒には寝られないんだ。結婚するまでは、絶対に、ね」
そのときの薫くんの目はかすかに鋭くなった気がした。でも、すぐに戻って、笑顔になる。
私は晴くんを見た。
晴くんは目を逸らしている。額に汗がツーッと流れて、私と目を合わせないようにしているようだった。
……晴くんと薫くんで、言っていることが違う。
結婚するまでそういうことはするべきじゃない、と言う薫くんと、そういうことも勉強しておくべきだ、と言った晴くん。
……どっちが正しいのかな?
──その夜、宣言どおり、晴くんと薫くんは一緒のベッドで寝た。
私はひとりで部屋のシングルベッドで眠ったけど、夜中までずっと、隣の部屋からふたりの話し声がかすかに聞こえていた。
何の話をしていたのかは分からない。
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