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薫くんはふにゅふにゅと私の手を握って、感触を確かめているようだった。
少し虚ろな目をしている。……まだ眠たいのかな?
心配になって手を握り返すと、薫くんはハッとして意識を取り戻した。
「ねえ、沙弓ちゃん。じゃあ今日は、晴に夕食を作ってあげるのはどうかな」
「え? 晴くんに?」
「そう。疲れて帰ってきたところに沙弓ちゃんの手作りの料理があったら、きっと晴は喜ぶと思うなぁ」
薫くんの提案はとても魅力的だった。
確かに、いつもお世話になりっぱなしの晴くんを喜ばせてあげられたら、どんなにいいか……。
「でも、私、あんまり料理したことなくて……」
「大丈夫。僕が教えてあげる」
私は顔を上げて、輝いた目を薫くんに向けた。
「薫くん、お料理できるの!?」
「うん。昔はホテルのレストランの厨房を手伝わされたこともあったから。まずはホスピタリティを現場で学びなさい、ってね。レシピを見れば何でも作れるよ」
「すごい……! 薫くんって、何でもできるんだね!」
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