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「料理はものづくりみたいなものだから、沙弓ちゃんもすぐにできるようになるよ。編み物得意だもんね。大丈夫。それと変わらないよ」
薫くん、優しいなぁ……。頭を撫でられながら、包まれるような彼の優しさをしみじみと感じていた。
私のこと馬鹿にしたりせず、いつも応援してくれる。天使のような笑顔の薫くんを見上げながら、少し顔が熱くなった。
「じゃあ、買い物に行こうか。近くにオーガニック食品のマーケットがあったよね。あそこで必要なものを揃えよう」
さっそくの外出。それも久しぶりの薫くんと。ワクワクする気持ちを抑えられない一方で、私は晴くんの忠告を思い出していた。
『薫に気をつけろ。あまりふたりきりになるな。起きたらすぐ部屋へ帰すんだ』
晴くんは確か、そう言っていた。
どうしてだろう……。薫くんはこんなに晴くんのことを考えてくれているのに。
「楽しみだね、沙弓ちゃん。晴、喜んでくれるかな」
眩しい笑顔を向ける薫くん。ほらね、やっぱり、晴くんが考えすぎてるだけだ。
私は「そうだね」と微笑み返した。
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