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「沙弓ちゃんはどうなの?」
逆に聞き返され、ピクリと体が揺れる。
二十五歳にもなって男の人とデートすらしたことないって、変に思われるかな。
晴くんや薫くんを入れていいならふたりで出掛けたり手を繋いだりしたけど、それ以外はさっぱりだ。昔はずっと三人でいたし、薫くんが引っ越してからは晴くんとばかりいたから。
私が答えられずにいると、薫くんは笑った。
「ごめんね。沙弓ちゃんに恋人がいるか聞くのも変だよね。晴と結婚するつもりなんだから、晴のことが好きなんでしょう?」
ハッとした。もちろん晴くんのことは好きだ。でもそれは、昔、薫くんに対して抱いていた想いとは少し違っているかもしれない。
晴くんのそばにいると安心する。でも、薫くんがそばにいると、体の奥から熱さが込み上げてきて、胸がいっぱいになるのだ。
「う、うん。好き、だよ」
こういう“好き”でも結婚はできると思っていた。お友達だって、恋愛と結婚は違うって言っていた子がいたし。
私が少し混乱したところに、薫くんはさらに質問を続ける。
「じゃあ沙弓ちゃんは、僕と晴が海で溺れていたら、どっちを助ける?」
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