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「え?」
「どちらかは助けられるけど、どちらかは見捨てなきゃならないとしたら。沙弓ちゃんはどっちを助けるの?」
笑顔のはずの薫くんの目が鋭くなって、私の瞳を射ぬいていた。
桜の花びらが舞う通りにきて、私たちの間をさあっと駆け抜けていく。
「そ、そんなの選べないよ」
私が正直に言うと、薫くんは首を傾げた。
「あれ?おかしいなぁ。即答できないと結婚はできないんじゃない?」
「え!?」
「だってそうでしょ? 結婚するってことは家族になるってことなんだから。沙弓ちゃんのお母さんに聞いてみなよ。お母さんなら、お父さんと他の男、どっちを選ぶか。他人の僕と迷っているようじゃ、沙弓ちゃんは晴のこと好きとは言えないよね」
そんなこと考えたこともなくて、愕然とした。私には晴くんを優先して薫くんを見捨てるなんて無理だ。その逆でも、もちろん無理……。
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