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「ごめんごめん。あまりに沙弓ちゃんが可愛いから、つい笑っちゃった」
笑われるのは恥ずかしいけど、怒って機嫌を悪くされるよりはずっと良かった。
しかし情けなくて包丁を手放してまな板に戻すと、薫くんは後ろから私の両肩に手を置いた。スッと余計な力が抜けていく。
「大丈夫、教えてあげるよ。僕の前に立ってごらん」
「うん」
良かった、教えてもらえる。
言われたとおりに薫くんの前に立ち、またじゃがいもと向かい合った。
すると、右手は右手、左手は左手、彼の手が背後から私の手をそっと包み込んでくる。
「え、薫く……」
「そのまま。前を向いてて」
耳に息を感じるほど、薫くんが近い。
背中にはぴったりと彼の体が密着している感触があり、視界ではふたり分の両手が絡み合っている。
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