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突然のことに息ができなくなり、腕がプルプルと震え出した。
「大丈夫? 震えてるよ。包丁が怖い?」
「ち、違っ……」
薫くんとの距離が近すぎて、包丁どころじゃない……!
なんだかいい匂いもするし。
せっかく教えてくれてるのに、こんなこと考えてちゃダメだ。
どうにか意識を手に集中させて、薫くんの手の動きに身を任せた。包丁は裏手じゃなくて、上から握る。左手はじゃがいもを持ち上げて、刃の腹に当てるようにして近づける。
ほとんど彼の手が私の手を勝手に動かしているが、息を飲んでそれを見つめていると、やがてするすると包丁がじゃがいもの表面を滑り、皮が剥け始めた。
「わっ、すごい……!」
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