117人が本棚に入れています
本棚に追加
/68ページ
魂を抜き取られるようなキスは長く続き、やがて意識が混濁してきた。
薫くんはクスクス笑いながらキスを止める。
突然の空白に、私は“もう終わり?”とでも言いたげに彼を見てしまった。薫くんはまだ興奮気味だったけど、それでも冷静に見つめ返してくる。
「このへんにしといてあげる。晴に美味しいカレーを作らなきゃならないから、料理を再開しないとね」
いきなりこの雰囲気を元に戻せ、と言われた気がして、私は恥ずかしくなって前を向いた。
骨抜きの体をどうにか立て直し、彼の脚の上からよろよろと降りて自分の足で立った。
「うん、いい子だね」
また私の左右の手を薫くんが包み、ふたつめのじゃがいもを剥き始める。
「沙弓ちゃん、分かってるよね。僕らがキスしたことは、晴には内緒だよ」
耳元で彼の声が響いた。
「う、うん」
最初のコメントを投稿しよう!