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もちろん、最初から言うつもりはない。私のことを婚約者としてこの部屋に置いている、と言っていた晴くんのことだから、薫くんとこういうことをしたと話せばさすがに怒られるに決まっている。
でも、薫くんは、どういうつもり……?
「晴は真面目だから、沙弓ちゃんにキスしようとはしないよ。でも、仲間外れは可哀想でしょ? 僕と沙弓ちゃんはキスしたって聞けば、きっと傷付く」
「……うん、言わないよ。晴くんのこと傷付けたくない」
「そう。それでいいよ」
違う。本当は、晴くんは私にキスをしようとしたことがある。
……それも、薫くんには言わないほうが良いんだろうか。
言ったら、薫くんはどう思う?
黙っていよう。
晴くんにも、薫くんにも。
料理を再開させたが、私はモヤモヤとした気持ちをいつまでも拭えなかった。
私はふたりに対して、初めて“秘密”を抱えることになったのだ。
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