1.晴くんと同居、薫くん乱入

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「……また薫のことか。沙弓」 薫くんの話をすると、晴くんは少し不機嫌になる。いつものように私たちの間に重たい空気が流れた。 こんなとき、薫くんがいたら……。 薫くんは“天使”のように優しい男の子だった。 サラサラの茶色い髪に、眩しいくらいの可愛い笑顔、女の子のように綺麗な顔立ち。私が何か失敗しても、「大丈夫だよ、沙弓ちゃん」と手を繋いで涙を拭いてくれたっけ。 特に中学時代は、綺麗だけど男の子らしくなった薫くんに、私は密かに片思いしていたのだ。 ……大好きだったな、薫くんのこと。 「今はどうしてるんだろう……」 「さあな。薫の話はもういいだろ。それより、同居の話だ。ちゃんと聞いて」 怒られながら、私は晴くんの指さした雑誌に目をやった。綺麗なマンション。私たちはここにふたりで住むらしい。 でも、住むって何するの? なんだか全然想像がつかない。 首をかしげながら、私はその後も続いた晴くんのよく分からない話を黙って聞いていた。
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