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翌日の朝、お父さんとお母さんに涙ながらに見送られてから、赤坂のマンションに向かうことになった。
昨日話を聞いたばかりで、もう今日から同居なの? 私が断ったらどうするつもりだったんだろう……。
送迎の車の中でそう考えながら、ちょっぴり不満げに晴くんの顔を見た。すぐに彼の唇が動く。
「家具はすべて揃えてあるし、必要なものがあれば俺に言ってもらえれば買い足しておく。食料品は宅配サービスも契約してるから、沙弓も自由に使っていい」
「……あれ? 私がお買い物して、料理するんじゃないの?」
家の中のことを勉強するって言ってたから、私、てっきり……
「出来ないだろ、沙弓には」
強い視線を返されて、私は何も言えなくなった。そりゃ、できないけどさ……。
なんで晴くん、そんなに冷たいこと言うの……?
ほんの少しふて腐れながら下を向くと、晴くんは頭を掻いて、付け加えた。
「だんだんでいいよ。すぐには難しいだろ。……気長に待つから」
やっと優しい言葉をかけてくれた晴くんに、私はパアッと気分が明るくなった。
新居に着くのが楽しみ。私の新しい生活のスタートだ。
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