1.晴くんと同居、薫くん乱入

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「どうして? それがないと外へ出られないんでしょう? 私にもひとつ必要だよ」 「外に出る用事があるときに、俺に言って。事前に渡すことにするから。無くしたら困るものだからな」 それで話を終わりにしようとした晴くんに、私は納得がいかずにすがり付き、カードキーを渡すように両手で受け皿を作って詰め寄った。 「晴くん! 私、頼りないかもしれないけど、大事なものを無くしたりしたことないよ。今までだってそうだったでしょう?」 晴くんは私の手を横へと流す。 「ああ。でも、万が一があると困るから」 「でも、それじゃあ自由に外に出れないよ。突然外に出たくなったときはどうしたらいいの?」 私の質問に、彼は眉を寄せた。 「それって、どんなとき?」 「どんなときって……それは今は思いつかない、けど……」 ダメだ、全然、話を聞いてくれない……。悲しくて目尻に涙を滲ませると、晴くんは困った顔でため息をついた。 「……分かった、泣くなよ。沙弓にも一枚渡すから。でも誰にも渡すな。誰にも、だ。どこにしまってあるかも言っちゃダメ。こういうマンションは常に狙われてる」 「うん……」 受け取って、ハンドバッグの大事な物入れにすぐにしまった。私だって最初から、ちゃんと厳重に保管するつもりだった。カードキーは渡されても、涙は消えない。
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