ペンギンのいた日々

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 あれから2週間。結局、私はペンギンの古巣を探し出すことを諦めた。  無論、最初から諦めていたわけではない。最寄りの交番でペットの捜索願いが出ていないか尋ねたし、電柱の張り紙は注意深く見るようにした。  だが、ペンギンなどという奇特な鳥を探している人はどこにもいなかった。ならば、餌をあげてしまった以上、私が責任を取るべきなのかもしれないと思ったのだ。  まあ、ペンギンとの暮らしが思いの外順調だったというのも理由としては大きい。  食事は私のものをわけてやればよかったし、排泄もどうやっているのか知らないがトイレで済ませていた。(ちなみに、朝刊が見当たらなかったら大体ペンギンの奴がトイレに持ち込んでいるのだ)そういうわけで私がペンギンのために何か特別なことをしてやる必要はなく、まあ世話のかからないペットだった。  それに、認めるのは癪だが私自身ペンギンに愛着を抱いてしまっているのも事実だ。  ペンギンはなかなかどうして悪くない同居人だった。例えば、以下は今朝の私とペンギンの会話である。 「なあペンギン」 「ギュー?」 「また総理が失言したそうだ。全く困ったものじゃないか」 「ギュエッ」 「大体昨今誰も彼も言葉というものに無頓着すぎる」 「ギュギュギュ」 「やはり徒にグローバルを謳うよりまず自国の言語、ひいては文化への造詣を深めるべきだ。そうだろう?」 「ギュエェッ!」  一事が万事この調子ではっきり言って気の利いた返しなど期待すべきもないのだが、会話があるというのはそれだけで素晴らしいことなのだと痛感した。  この年まで仕事一筋、独身を貫いてきた私だったが、そのことをほんの少しだけ後悔した。  そんなある日、私はペンギンがテレビを食い入るように見ていることに気づいた。 「どうした?ペンギン」 「ギュエッ」  テレビ画面には青い海が広がっていた。そうか、なるほど。 「行きたいのか?」 「ギュエェッ!」  こうして今週末の予定が決まった。  
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