ペンギンのいた日々

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 その後、私は30年ぶりに実家を訪れ、母の遺品整理を手伝っていた。  今更私に何ができるのかと思ったが、母が私の幼い頃の玩具を後生大事に取っておいたというのだから仕方ない。  埃を被った無数の玩具の中に、見覚えのある黒い尻を見つけて私は微笑んだ。 「やっぱりここにいたか」  幼き日々、片時も私の手を離れなかったペンギンの人形がそこにいた。  ギュエッ、という濁った幻聴が聞こえた。
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