アナスタシスという名のケモショタ

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 部屋に連れ込まれると服を脱がされ手足を拘束し台に張り付けられる、腕を持ち上げるとびくりとはするが自由に動かせそうにない。 「ここで待っててね、すぐ戻るよ」  マキナさんが部屋から出ていく、また一人ぼっちになっちゃった。 「また一人ぼっちなのかな? 私のこと忘れないでっ」  私より背の小さいピンク色の猫獣人で黄色い髪の女の子が私の後ろに居る。 「ノア……」 「えへへ、頑張ってたね、あの仔」 「うん、あとちょっとで外に出れた」 「あの博士モドキ来るの早かったね、早くここから逃げよう」 「どうやって逃げるの?」 「体の拘束外してあげるからちょっと待っててね」  額の二本の角がぼんやりと光り拘束具が外れる。台の上で腕を動かした後そのまま座る。 「お外には何があるの?」 「うーん、ごった煮な何でもありの巨大な塔とゴミ屑が住む塔とありったけの空と地面!」 「楽しそう? 私の知らない場所でいっぱいだね」 「ミユが知らない事でいっぱいだよ~っ それにケモショタいっぱいいるからね」 「ケモショタ!」  二匹は耳と尻尾をぴょこっと天に伸ばす。 「そうだよーっ! ケモショタ一杯だよ~」 「ここもケモショタ一杯いる気がするよ?」 「ここのケモショタは男女交際禁止なんだよ、大変だね」  私の周りをくるくると回り膝の上に乗っかるノア、もふもふが気持ちいい。 「男女交際禁止だと会えないの?」 「会えない……あの仔だってケモショタと合ってないし……」 「あの仔?」 「それにマキナ! あの博士モドキとかやばいよ? またあの痛いのされるかも」 「ぴゃうっ! いたいのやだぁ……」  涙がぽろぽろと零れ落ちる。ノアの顔が近づいて額合わせ、おててが頭に触れる、なでなで気持ちいい。 「よしよし、ミユはかわいいうさぎさんだね」 「ぷー……」 「マキナから逃げるよ」 「うんっ」  台から降り扉の前へ歩いていく。自然と心が落ち着いていく、何もわからないけど分からないから真っすぐになれる。 「扉の壊し方は分かる?」 「魔法? だよね」  手のひらを扉にかざしほわほわを集めて、解く、その前にノアに手を降ろされた。 「だめーっ! 大きな音が響いたらまたいろんな仔来ちゃう。解放しないで維持するの」 「やってみる……」  もう一度手のひらをかざしほわほわを集める、それをゆっくり扉に押し付ける、額の二本の角が光り輝く、優しく扉が溶かされていく、もうこの部屋からは出られそう。 「できたっ」 「上手だよミユ~、はいなでなで」 「なでなで……んっ♥」  私の方が身長が高いから屈んで頭を差し出す、なでなでいっぱいして……? 「頑張ったらご褒美でまたしてあげるからね」 「はぁーい」  部屋から出たら白い衣を探す、どこかに引っかかってないかな。 「きょろきょろしてどうしたの? 白衣が無いから恥ずかしいの?」 「そういうわけじゃないよ、でも……」 「うんうん、白衣、似合うと思うよっ」  話していると既に白衣を着ていた、体のサイズにぴったりな白衣をぎゅっと抱きしめるように感触を確かめる、爽やかな匂いがする。 「もう大丈夫だよね」 「うんっ!」 「でもー……あっ」  気が付くと紺色のぴっちりとした服を着ていた、なんだろうこれ。 「見えちゃうのも不味いよねって、ケモセーフでもいいんだけど!」 「ねぇノア、これ何ー?」 「スクール水着、略してスク水ぅ」 「スクール水着……?」 「かわいい服だよ! ミユかわいいよ!」 「えへへぇ」 「ちょろい……」  小声でノアはそう囁いた。かわいいと言われ白衣をなびかせながらもじもじする。 「それで、ここは何処だろう?」 「研究棟の29階だよ、テレポーター探そう」 「テレポーター?」 「こっち!」  ノアは先を走る、その後を駆け足で走っていく。不思議とすれ違う人は居なかった、ロピカと外に出たときは窓があったのにここは窓から外を見れない、窓そのものが無い気がする。ノアが足を止めるとそこにはエレベーターがあった。 「これに乗って降りれば外に出られるよ」 「外に出たら……ロピカと会えない?」  エレベーターが到着した音が聞こえた。扉が開かれる。逆光でノアが包まれた。 「会えないよ、今日たまたま出会っただけの赤の他人がそんなに大切なの?」  ゆっくりとエレベーターへ歩む、私も逆光の中へ消えていく。 「赤の他人なのに助けてくれたロピカだもん、恩を返したいの」  静かに瞳を閉じパネルの中の一番高い数字を押す。 「でも本当は?」  エレベーターの扉は閉まり上層階へと進み始める。瞳を開けて私はこういう。 「あんなかわいい仔手放すなんて勿体ない、ロピカは私のものだよ」
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