♥ピンク色のもふもふと白色のもふもふ

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     ぎゅっと抱きしめられていた温もりがまだ心地よい、まだ甘い匂いがする。目が覚める、ピンク色のもふもふで大きな猫は居なくなっていた。手首で目を擦りそっと何かに触れる、青色のローブ、そして青色の帽子。何故か裸でちょっと寒い、ローブを纏って体をふらつかせながら立ち上がる。崩れた足場の近くにはコンクリートの残骸や瓦礫が散乱しておりほんの少しの日差しがその隙間から刺している。ゆっくりと近づいてその先にある何かを見つめた。   「4番隊5番隊は周囲を散策、ここは3番隊が索敵する」 「了解!」    声が聞こえた、視界には灰色の荒野にドーム状の建物が映り込んだ。そこに米粒の様な人影が固まって行動している。銃声も聞こえる、こっちに向かってくる気がした。逃げなきゃ。  光の刺す方向とは逆の方向へ小走りに走ると青いローブの中からピンク色のスマホが落ちる。触れる時に画面に手が触れ画面が表示される。画面中央左にはあのピンク色の大きな猫の様な物のドット絵の様な物が映り込んでいる、服装は白を基調とした露出の高い服装の様に見える、画面右にはゲージ付きでステータスの様な物が映っていた。    ropikasia  ―――――  sta7 agi6 int8 luc2    異世界転生では割とあるのか分からないけど名前が記載されている恐らくこれは自分のステータス、高いのか低いのかよくわからない数値だがluc(運)が2なのは納得したくないが的を射ている。  自分が起き上がった場所へ戻ってきてしまった、そのまま歩いて部屋の隅の暗い所へ移動する。軽く周囲を調べるとコンクリートが音も無く崩れどこかへの道が現れた。ボロボロなのに綺麗な廃墟、一直線に長い廊下のような場所を進んでいく、刺した光がほんのり明るく照らしてくれて助かる。  突き当たると円の様に曲線の道が現れたところで誰かの気配を感じる。足音が遠くからザッザッと聞こえ身震いする。音のする方向とは逆の方向へ早足で歩いた。歩いたけど、こけた。luc2だからダメダメだったんだろう。 「誰だ! 大人しく投降し姿を見せろ」  ガチャリと銃を構える音が聞こえ僕は逆らった、ローブに足を引っかけないように少し持ち上げ女の子の様に。  牽制射撃が聞こえる、跳弾が怖い。崩れる足場、滑る僕、廃墟の様な施設の奥に僕は落ちていく。それを追いかけるように敵が滑り下りてくる。円柱の柱の中の様な場所の端っこにぶつかりスマホを落とす、衝撃で画面が開く。 「抵抗しないほうが身のためだ、子供だろうと容赦しない」    その瞬間初めて敵の姿を僕は見た、長いマズルに毛深い手足、尻尾もある。青と白の警察カラーの様な軍服を着ている。たぶんドーベルマンとかそのあたりの系統、思わず興奮を隠せない。  思考が錯乱していた、何故銃を向けられている、何故こんなことになっているのか。  はっとした、すぐにスマホを確認しあらゆる操作を試みる、能力にタッチする、能力が増える、しかし制限がかかっており思うように増やすことができない。ピンク色の大きな猫にタッチする、大きなボタンが表示される。 ――unlock――  解除、その表示に飛びつくように指を触れる。   ――limited mode――  sta14 agi12 int16 luc4  リミデットモード……ステータスが2倍に跳ね上がっている、この状態でステータスをタップすると……    sta20 agi20 int20 luc20    やっぱりそうだ、限界を超えてステータスを伸ばせたようだ、最初から解放できればいいのに。視線を少し下に向けると見慣れないステータスが表示されている。APP14、とりあえずタッチする。APP15へ変化したその瞬間、ぞわりと指先から手首まで一気に白い毛が生えふわっふわの手に変化する。   「ふえ!? もふもふ!」    声を出すもすぐに手首から一気に、魚肉ソーセージの皮を剥くような勢いで腕が白い毛で染まる、肩まで上り詰めた毛皮はもう片方の手目掛けて走り抜ける、一皮むける様な、ヒリヒリした感覚に混じり腕も揉みしだかれるような感触に困惑しその感覚がゆっくりと首を侵食する、ピリピリと人の皮を剥いてくる。首付近よりも速いスピードで上半身はふわふわと変化が続く、ぐいいいいっと引っ張られムズ痒い感覚に締め付けられ発熱が収まらない、熱い、さっきまで寒かったのに。腰まで到着するとそのままするんとパンツを脱がす様に下半身がもふもふに包まれる、それと同時に顎から口元へ、ゆっくりと白い毛皮は浸食する。   「う、ゃ……なに、これぇ……」    足先までも白く染まると成長中が加速する、ギンッギンと痛めつけるとゆっくりと適正身長へ引き戻される、元が小さかったからそこまで変化はないだろう、つまりこの成長中は。   「痛い!、いたいいい、はやくおわって……」    マズルがほんの少し浮き出て口元の形が変化する、黒い髪はそのまま、耳がきゅっきゅ! と数段階に分けて引き延ばされる。   「ううううう…………」    周囲の音が一段と聞こえるよう大きな獣の耳へと変化する、足先もきゅっと小さくなり上手く立てなさそう。尾てい骨から痛みが主張しぐっぐっと何かが生え始める、白くて長い尻尾が僕をいぢめる。ギュンギュンと体全身へ血液は送り出され熱くて熱くてたまらない、汗がぽたりぽたりと滴る、ちょっと甘い、僕の汗、鼻が良くなったせいで感じてしまう。僕のフェロモン感じちゃう、変な気分になる。顔が赤く火照る、熱くてローブを解く、露になる僕の体、新しい僕の体。   「なんだこいつ、捉えろ!」    前よりも感度のいい耳にはうるさいほどの声が聞こえる。熱くてだるくて無意識におちんちんが立っちゃってる。どうにかしなくちゃ、何かかっこい魔法……   「アイスソード!」    唱えると黒い髪が水色に代わり手元にアイスソードの様な大剣が現れる、大剣に少し触れる、低温やけどする気配はなく掴むことは出来そう、そっと掴むと氷の大剣が僕を冷やす。   「撃て! 撃てえええええ!」    銃声が響き僕目掛けて発射される、咄嗟に大剣を盾代わりに構えると魔法陣の様な物が現れ難を逃れた、シールドの様な物が出てきていたみたいだった。咄嗟に敵に向かって走ってみる、氷の大剣を持っているのにも関わらず以前よりも何倍も動きやすいそして体が軽やか、羽根が生えたような気分。敵の目の前で氷の大剣を一振り、火花の様に冷気が舞い散り涼しくて気持ちがいい、重い打撃音とほんの少しの重さが腕に伝わってくる。   「捉えろ、捕縛するんだ!」    2人3人囲んで銃撃したり警棒のような物を振り下ろしてきた、しっかり氷の大剣でガードしてから回転しながら振り下ろす、回転した周囲から氷柱が生え敵を責め立てる。魔法の様な物を使えて気分が良かったがそれよりも高ぶる謎の感情に高揚させられる。   「部下が次々と倒れていく……仕方ない、死なないといいが……」    一番奥にいた敵が背中に担いでいた大きな刀を手に僕の前に歩いてくる、恐らく僕が倒した他の敵よりは強いだろう。氷の大剣を二回ほど斜めに切りつける、敵の刀が氷の大剣をガードし切り込む、氷の削れる音と同時に敵の刀に紫の稲妻が走る。僕は咄嗟に離れる、勢いよく二回ほど飛び跳ねながら距離を取る。   「ビビっちゃいけないよ、この刀を使うのは久しぶりなんだからさ」 「な、なんで僕を狙うんですか」    咄嗟に声が出た、この世界に僕が来たことは周知なのか、他に何か要因があるのか気になった。   「当たり前だよ、ここはヒューマン側の研究所跡地。そしてたった今日ヒューマン側が抱える遺産をこちら側に返してもらったばっかりだからな!」 「だから、なんだよ」 「お前もそうなんだろう? ヒューマンからケモノへ変化したところを見てもここの成果物と見える、違うか?」    わかんないよ、じりじりと後退りする。足を踏ん張りもう一度詰め寄り氷の大剣を振り下ろす。敵の刀によって防がれ氷が削られる。 「そう焦るなって、手荒な真似はしない」 「そんなはずない!」    咄嗟に片手を氷の大剣から離し男の腹を押す、そして唱える。   「ピアシング・アイス!!」    敵の武装を貫通する氷柱が敵の背中から生える、パキパキと腹を中心に凍結が始まる。   「ぐふっ、これは、警戒対象だな……」    男はその場で倒れ全身が凍結する。氷の大剣を地面に置くとその場で弾けて無くなってしまう。氷の大剣を振るった余韻に浸りながら地面に寝転がった。    スマホを確認する、アンリミテッドモードとやらを解除するために画面をタッチしていくが目当ての画面へ変化しない。ステータスは弄れるようなので念のために戻しておく、luc、運は欲しいから少し上げるけど……    sta14 agi12 int16 luc10    試しに初期ステータスに戻そうと試みるがアンリミテッドモード中は初期ステータスから2倍の数値以下に設定できない、更にAPP値も変更が出来なかった。それよりも体に溜まった熱量がムズムズしてもどかしい、研究所とやらに居てもまた襲われるだけだろうし移動はしておきたい。敵の警官みたいな武装をはぎ取り使えるものを持っていく。生憎刀は大きすぎて持っていけそうになかった。    銃x1  マガジンx2  警棒の様な物x1  地図x1  ポーチx1    携帯食料みたいなものが入っていて助かった、袋から取り出し口に頬張ると変化前と同じ味覚の様で安心する。警棒の様な物は確かに警棒なのだろうが銃にも取り付けることが出来そうだから警棒ではないんだろうなと思った。  上がった息が整い落ち着きを取り戻す、白いふわふわに包まれた両手をグーパーと閉じたり開いたり繰り返しその手で口元を包んでみる、鼻先を再確認するように指で鼻先に触れ耳を触る。そっと尻尾を揺らしてみる、まだ揺らし方は分からないがそこに尻尾があるというのは感覚で伝わってくる。これはケモショタというものになってしまったのではないかと僕は結論付けた、ケモショタ、その響きに幸せを感じてわくわくしてくる。  確認が終わりポーチを腰に巻き付けてから青いローブに身を纏い地図を頼りに一番近い町へ向かい始める。      
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