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何回射精したんだろう、脳に散布されたピンク色の靄が消えかけている、まだ発情からは抜けきっていない感覚はするけど楽になってきた、射精して楽になるってふつう逆だよね……
そう思った瞬間、何処かに何か落ちた音が聞こえた、何処かというのはこの広い部屋の何処か、誰にも監視されていないはずの部屋に桃色の、桃色よりはもう少し薄ピンクの獣人が倒れていた。額に角が生えていて大きなうさ耳が付いている、兎獣人……一角うさぎかな、角が二本生えているから二角うさぎだけど。顔が揺れピンクの体より更にショッキングピンクな髪の毛が靡き鼻がひくひくと動いている。
「起きてる……?」
何となく声を掛けた。恐らくこの仔は人間の言う被験体なのだろう、偶然逃げ出してきた先が僕の居る研究室だった様子。
「ふぇ……むぅ……んぴゃっ! 誰ですか!? えっとあの……だめですよ! 触っちゃ!」
ハチャメチャに元気だった、飛び上がった兎獣人に合わせて立ち上がる、僕より身長が少し高い。ぱたぱたと体を叩いている、服が合ったら服装を整えていると言えるのだろうけど……
「ふ、服がないー! なんで? 何で服がないの?」
「お、落ち着いてうさぎさん」
「うさぎさんって私? 私だよね」
「深呼吸してー、息を吸ってー」
「すってー……」
「吐いて―」
「はいてー……」
「……うんっ すっごくかわいいメスケモさんだね」
「メスケモ?!」
「その、名前、教えてくれるかな?」
「名前? …………名前?」
彼女を呼ぶのにメスケモだのうさぎだの呼ぶのは不味いと思い名前を聞いたが、返事が名前だと反応に困る。
「もしかして名前がない? それともど忘れしているだけ?」
「わかんない、でも名前が分からない……」
「えっと……名前は僕達を識別するために必要な物、僕の名前はロピカ、そうっロピカと呼べばいいよっ」
「ロピカ……あなたを呼ぶときはロピカと呼べばいいの、その、青色でエッチな感じの匂いがする……」
「ううううストップーー! これはー分け合ってダメな感じになっているだけだから! 名前に結び付けないでぇ……」
「違うの?」
「違う、違うよ?」
「分かったっ 私の名前は多分、03Uだと思う……」
「識別番号みたいだね、うーん、03Uと呼ばれてうれしい……?」
「名前って呼ばれると嬉しいの?」
「うー、僕も意識したことなかった、でも、僕はロピカって呼ばれると嬉しいよ。かわいいし」
「名前ってかわいいの?」
「うんっ! 名前って不思議だよ、かわいくなったりカッコよくなったり美しくなったり……君はどんな名前が欲しい?」
「私は……かわいい名前欲しい……」
「かわいい名前、分かったよ」
水色と桃色がこの部屋から出た出口を見つめうさぎ獣人の手を引っ張りながら歩いていく、監視カメラが付いていたら人手が来るのは時間の問題だから早く移動したい。ここに居たら二匹共々囚われの身、僕だって逃げなくちゃいけないのは変わりないしやろうと思えば魔法を使って逃げ出そうと思ってたけど、あの二匹が使ってきた鎖には魔法が一切効かなかった、もしかしたら僕の魔法はここでは使い物にならないかもしれない。出口と思わしきドアの前に立つ、ボタンを押しても開きそうもない。こういうのは物理的に壊せばいいんだっけ…… ポーチに入っていた拳銃を取り出し鍵目掛けて撃ちこむ、鈍い金属音が鳴り響くと共にドアが開いた。よかった開いてくれて……
「行こう」
「う、うんっ」
ドアの先の階段を駆けがあっていき人間がさっきまでいた部屋にたどり着く、部屋に掛けられた白衣をうさぎ獣人に手渡す。
「とりあえずそれ着て、裸は不味いから」
「ロピカも裸……」
「裸だけどー、かわいいからいいのー!」
「私も、かわいい?」
「うんっ かわいいメスケモちゃんだよ」
軽く部屋を見渡す、何か使えそうなものが無いか確認するが特に何も見つからなかった。廊下に誰もいないかドアに耳を当て確認する。
「私に何かできるかな……」
「そうだね、魔法とか使えたらうれしいな」
「魔法? 使えるよ」
「それは嬉しい」
「でも、ちょっと難しいな、物を壊しちゃいそうで」
「壁とか、壊せるかな」
「できるかも……」
「やってみて」
彼女はこくりと首を縦に振りドアに向かって手を向け集中する、ゆっくりと薄ピンク色の光を集め正面へ放つ。眩い光が放たれドアから先が消え去る。
ドゴア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”ア”
轟音が鳴り響いた後は穴が出来上がっていた。
「すごい、すごいよ!」
「う、うん……すごいのかなぁ」
うさぎ獣人は首を傾げているところを僕は腕を掴み穴目掛けて飛び込んだ。高所、穴の先は10階建てビルよりも高い空中だった。急いで魔法を使う、発情なんて言ってる場合じゃない。兎獣人を抱きながら地上から数センチ空中を浮遊するようなイメージで……祈る。
「すごい綺麗、あれは何?」
彼女は空を指さし目をキラキラさせながら僕に質問した。
「あれは……空だよ」
「そらっていうんだ……」
この世界に転移されてから見てきた空は灰色の空だった、ここにあるのは青空、まるでこの世界は平和と言わんばかりの真っ青な、空。
地面すれすれに浮遊する、ぎゅんっと股が疼く、むらむらと同時に甘い匂いが漏れ出す。
「くんくん、甘い匂いがするー……」
「うう、嗅がないで……」
「いい匂いだよ?」
「それでもだめー」
僕は浮遊をやめ芝生に降り立つ、そのまま門のような場所まで一気に駆け抜ける、ここから脱出して……どうするんだ。
「逃げられませんよ、このドーベル隊親衛隊隊長のベルが相手です! わっすごい臭い!」
「ずいぶんかわいい隊長がお出ましかな」
「かわいい、かわいいよぉ!」
僕よりも小さいドーベル犬の獣人が目の前に立ちふさがる、この雰囲気は恐らくケモショタだろう、短いマズルにぴんと立った耳がとてもかわいい、今なんて?
「君もかわいいって?」
「かわいいの、見ているとドキドキするの」
「……僕もかわいい?」
「うんっ!」
「えへ、えへへぇ……ありがとうっ」
「僕を無視しないー! ここから出ちゃだめなんだからね!」
戦闘前に思い出す、女の子しか魔法は使えない、僕は絶大な魔力を持つ何かと繋がっている。僕は彼女に目を合わせる。
「ミユ、僕に魔力を分けてくれないかな」
「……ぴゃうっ? いいけど、大丈夫かな」
「大丈夫だよミユ、僕を信じて」
「うん、信じる、ロピカ。えっと、ミユって」
「君の名前」
僕は魔法を使わずに正面のベルへ警棒と銃を片手に走っていく。ベルも警棒を手に構えている。
「ここで捕まるようなケモショタじゃないこと、見せてあげるよ」
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